【総括】いま深圳がヤバい!ニコ技深圳観察会2017春に参加してきた

リクルートマーケティングパートナーズでAndroid / iOSアプリの開発を担当している平野です。

2017/4/3〜5に行われたチームラボの高須さん主催のニコ技深圳観察会に参加してきました。ニコ技深圳観察会は、高須さんのガイドにて3日かけて中国広東省の深圳にあるハードウェアベンチャーやアクセラレータ、Makerスペースなどを巡るツアーです。

このニコ技深圳観察会の参加者はレポートをブログ等に掲載するというルールのため、会社のブログを借りてレポートを掲載します。

なお、今回のニコ技深圳観察会は有休を使った私費での参加であり、リクルートマーケティングパートナーズの業務とは一切関係ありません。

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深圳の歴史

深圳という場所を知るためには、深圳の歴史を知っておくといいので簡単に説明します。

香港に接した深圳は、30年前に中国の改革開放が行われるまでは人民に西側の生活を見せたくないということもあって寂れた漁村のまま捨て置かれた場所でした。

解放前の1980年の人口は33万人だったのが2016年には約1,200万人となり、深圳はわずか30年でできた世界的に類を見ない大都市です。そのため20代・30代が全体の65パーセントを占め、65歳以上の人はわずか2パーセントしかいません。中国国内から短期間に大量に人が流れ込んだため地元民がほとんどおらず、香港の隣であるにもかかわらず広東語ではなく普通話が話される地域です。

深圳の人件費

街中の屋台で見かけた店員募集ですら既に月4,000元(約64,000円)程度という状況です。屋台の店員なんて学歴や経験が無くても飛び込みでなれそうな職業1)本当に飛び込みでなれるものかどうかは分かりませんが、微妙な店員もいたので飛び込みでもなれるんだと思うですらもはやそんな値段です。

店員募集の広告。「店員3500〜4000元+ボーナス、店長4000〜5000元+ボーナス+育成ボーナス」と書いてある(はず)。

工場の工員は下が月5,000元(約80,000円)からという状況らしいです。しかも寮あり(4人部屋とからしいです)・3食付きなので、毎月4,300〜4,400元(約68,800円〜70,400円)程度を手元に残すことができるようです。日本で居酒屋でバイトして暮らすよりもよっぽど手元にお金を残せる状況です。

仮に深圳が今のままのスピードで賃金が上昇するとすると、およそ6年後には深圳の工員の賃金と日本の地方の高卒賃金はほぼ同じ額になる計算になります。

私が深圳観察会に来る前は、深圳の工員の賃金が既に安くないことから近い将来に一部の工場は日本に返ってくることになるのかもと思っていました2)コストの問題もありますが、開発と製造が距離的に近いことのメリットは小さくないために戻ってくるのではないかと思っていた。しかし深圳という場所が大量のサプライヤーがいることや、基板やプラスチックケースが安い価格で出回っていること、輸出に有利な大きな港があること、中国という大きな市場にアクセスしやすいなど、深圳を取り巻くエコシステムを実際に見てしまうとそう簡単な話じゃないなと思うに至りました。もしかしたら日本の製品開発リソースや人を深圳なり香港なりに移す未来の方がよっぽど現実的かもしれません。

ものすごい速度

深圳という街は65歳以上の人はわずか2パーセントしかいないために、スマートフォンを使えない人をほとんど無視して社会制度を作ることができます。これがMobikeといった自転車シェアリングや、WeChat Payのような完全に現金レスな決済サービスといったITを全力活用したサービスがものすごい勢いで普及する土壌なのでしょう。

これはWeChat Payを実際に使ってみるなどして体験してみないと理解できません3)自転車シェアリングは中国の電話番号が必要なので、私の滞在中には使えませんでした。スマホひとつで本当にどこでも決済ができるというのはどういうことなのか、自転車をどこでも借りられてどこでも乗り捨てられるというのはどういうことなのか。もちろん私も深圳に行ってどうだったかということを聞かれたら、私はあったことを説明できるし、相手も私の言っていることは分かるでしょう。ですが実際に体験した私が未だに腑に落ちていないことが多いのに、そんな私の言葉を聞いても本当の意味での理解はできないような気がします。

WeChat Payで支払いをしているところ。写真の場所はWeChatを開発・運営しているTencentのカフェ。

ハードウェアスタートアップ

シリコンバレーはITのメッカですが、深圳は本当の意味でハードウェアのメッカでした。よく分からないパーツが想像も付かないような規模で売られていたり、それらに投資する潤沢なマネーがあり、そこに集まった起業家やエンジニアがおり、とてもエキサイティングな場所です。

ソフトウェアに関わっているとどうしてもシリコンバレーの方に目が行くし、普通は中国にどんなサービスがあるかなんて知らなかったりしますが、深圳と中国はソフトウェアエンジニアも気にはしておいたいい場所でしょう。

深圳はすぐそこだ

深圳はハードウェア界隈の人たちには知られた場所ですが、それ以外の人たちには未だよく知られていない場所です。私も深圳観察会に参加するために休暇を取ったときも「シンセン? それどこ?」という反応が大半でした。

そんな深圳という場所は、成田から飛行機でわずか5時間の場所です。あの街はいろんな意味で今までにないものです。そんな未来都市がすぐそこにあるのだから、興味があるなら一度行ってみることをオススメします。といっても水先案内人がいないと深く知るのは難しいので、高須さんの主催する深圳観察会はとてもいいツアーなので是非参加してみてください4)深圳観察会のルールがありますので、守れる方の参加をお願いします。高須さんの本や過去の参加者のブログを読むことで深圳がどんなところはなんとなく分かります。それでも行ってみて来てみると分かることがありますし、本やブログでは伝わらない窒息しそうな異様な濃さが深圳という街にはあります。

おまけ

なんてことない iPhone修理」というiPhoneの修理の本が深圳の本屋で売っていたらしいです。深圳ではこんな風にリバースエンジニアリングした設計書がそこらの書店で売られていたりするそうです。ホントすごい街です。

「なんてことない iPhone修理」
Photo by GOROman

参考

脚注

脚注
1 本当に飛び込みでなれるものかどうかは分かりませんが、微妙な店員もいたので飛び込みでもなれるんだと思う
2 コストの問題もありますが、開発と製造が距離的に近いことのメリットは小さくないために戻ってくるのではないかと思っていた
3 自転車シェアリングは中国の電話番号が必要なので、私の滞在中には使えませんでした
4 深圳観察会のルールがありますので、守れる方の参加をお願いします