リクルート メンバーズブログ  組織で実現するUX

組織で実現するUX

こんにちは。プロジェクトマネジメントグループの関山です。

リクルートグループ内のサービスリニューアルやエンハンスにおけるUI・UX検討とプロジェクトマネジメントを行っています。UXでのサービスの価値最大化やプロジェクト推進上での様々なハードルに頭を悩ませながらも、いいサービスを提供できるようにと日々奮闘しております。

偏りがちなUX

UXデザインという言葉は一般的になりつつあります。「ユーザーエクスペリエンス」という言葉からも、ユーザーファーストの考え方でカスタマーにとっての価値や体験を重要視する傾向があります。それ自体は間違いではないですが、必ずセットで考えなければいけないのが「ビジネスニーズ」です。

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重要なことは、ユーザーにとって使いやすく、ビジネスにおいて売上が上がるという、ユーザーニーズとビジネスニーズが一致していること。ビジネス戦略を導くための手段としてUXを活用していきます。

ユーザー要件からビジネス要件を捉える

プロジェクトは様々な状況や環境に応じて変化していきます。市場や競合などの動きを把握するのはもちろんのこと、「自社」としてのビジネスニーズを細部まで的確に捉えておく必要があります。プロジェクトを推進していると起こりうる調整事項に関しても、起こることを前提に準備しておくことで、サービスとしてやるべきこと、または自身がやりたかったことにより近づけることができます。

プロジェクトの工程において、ターゲット策定やカスタマージャーニーを検討する際に、コミュニケーション戦略がユーザーニーズに片寄ってしまいビジネスニーズの検討が抜けがちです 。そのため、下流の画面設計・制作・開発工程でサービスの形ができてきてからビジネス潜在ニーズが顕在化し、新たな要件が出てくる、または検討していた施策ができなくなるということがよくあります。たとえば、UX最適化のために実施しようとした施策が、そのままだと業務上の運用に影響するような場合が該当します。

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目標を達成するためにユーザーにどのような体験をしてもらう必要があるか、そしてそれがビジネス要件として自社に影響があるのかを見極めながらコミュニケーション戦略を検討していくことが重要です。

組織でUXを実現するために

対ユーザーへの施策を検討していく際に、ビジネス要件や開発要件など考慮する必要がある事項をビジネスニーズとして詳細に洗い出し、それに紐づく組織内のメンバーをプロジェクト内のターゲットと捉え調整していく必要があります。そのためにもプロジェクトを進めていく際には、まず組織内のステークホルダーを調べることから始めなければなりません。

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そして、組織内のステークホルダーを説得するためには、ビジネスにおける短期的・長期的なROIを明らかにし、施策の実行に結びつけることが大切です。ユーザー中心の考えは重要なことですが、組織の中ではそれが容易にできるわけではありません。ビジネス要件を考慮したKPIを設定し、承認プロセスなど整備したうえで、プロジェクトを推進していくことで組織全体でのUXデザインが実現できると思います。

UXデザインは、サービス開発・プロダクト開発におけるユーザー中心設計だけで成立することはなく、ビジネスを構成する様々な領域と人々を巻き込んだ活動であるべきです。

UXと開発の関係性

現在のWebサイトは、開発が伴わないプロジェクトはほぼ無いに等しい状態です。UX向上によるユーザーの満足は、リリース後発生する事象であることから、開発スコープから外されてしまうケースが多々あります。プロジェクトキックオフ時や定期ミーティングでは、開発メンバー含めてプロジェクトゴールや目的の認識合わせを徹底することが重要です。

そして、開発時の要件の認識の違いは、工程や領域の異なるメンバーごとの思いこみやそれぞれの都合などによって、本質的にやるべきこととは違う解釈がなされてしまう、ということも非常に多いです。実際に UIUX(情報設計、ビジュアルデザイン)とフロントエンド開発・システム開発の部隊は、いかにそれぞれが連携・協働しているかが重要であり、その際に、割とプロジェクトの中心(上流から下流まで関わる)にいるUXデザイナーが要件をうまくコントロールし、一気通貫での施策検討により問題を回避していくことで本質的なUXを実現させます。今の時代は、上流(事業戦略・コミュニケーション戦略など)も下流(制作・開発など)も考えられるUXデザイナーが必要であり、求められる知識は幅広くなります。

最後に

UXという言葉自体が便利に使われたりすることもありますが、実際に「UXの範囲」というものは厳密には存在しないはずです。なんだかんだ言っても個々のスタンスやマインドに依存していくこともあります。プロジェクト推進時には、個々が制約を設けずに様々な領域や工程に染み出していくことで、組織としてのUXが実現できていくと考えています。

求められる知識は広く、やりたいことの実現に向けて調整することも多岐にわたりますが、リクルートテクノロジーズでUXデザイナーとして活動することは、自分自身を大きく成長させてくれるはずです。