リクルート メンバーズブログ  Adobe Summit 2016 in Las Vegas Report: 「組織で取り組む”エクスペリエンス ビジネス”」

Adobe Summit 2016 in Las Vegas Report: 「組織で取り組む”エクスペリエンス ビジネス”」

こんにちは。サービスデザイン2部 デジタルマーケティンググループの松村です。
2016年3月22日より3月24日にわたりアメリカ・ラスベガスにてAdobe Summit 2016が開催されました。前回に続き、Adobe Summit 2016のレポートをお伝えします。

全体としてどのようなことがメッセージされたか?

■「企業のマーケティング支援領域には第3の波が訪れている」

1つめは、バックオフィス支援の波。主に業務プロセス改善、BPRの浸透によりバックオフィス業務のありかたが変わりました。
2つめは、フロントオフィス支援の波。CRM、One-to-One Marketingを通し、顧客資産を管理し活用するという概念が生まれました。
そして、3つめとして今回提唱されたのが「エクスペリエンス ビジネス」の波です。

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【図】カスタマーへ価値として一連の体験を提供し続けるエクスペリエンスビジネス

■「エクスペリエンス ビジネス」とは

今回提唱されたのは、「マーケティング」という企業活動が、「ビジネス戦略の一手」から「顧客に提供する体験を価値として提供するビジネス設計そのもの」に変化しているというメッセージでした。

質の高いコンテンツ提供の重要性、カスタマーがおかれているデバイス環境・コンテクストの理解、認知心理学的アプローチ、といったトピックを軸に、Adobe Marketing Cloudを導入している企業の事例が紹介されました。

質が高いコンテンツとは何でしょうか。優れているクリエイティブを提供することはそれ自体が価値であり、Adobeのプロダクト戦略においても、Creative Cloudにおいて手がけられている領域だといえます。

ただ、今回のカンファレンスでは、対峙するカスタマーのデバイスの使い分け方、すでに知っている嗜好性や、これまでに行った行動から、本当にカスタマーが求めている質の高い情報を最適なタイミングでひとりひとりに提供すること、その体験全体がコンテンツの質の高さを形成する、ということがいずれのセッションにおいても共通するメッセージとして述べられていました。

そして、この体験の提供を実現するために必要なデータ基盤を整備し、行動データを社内横断で活かすこと、それを行う上でのハードルと解決策、これらのトータル設計が、エクスペリエンス ビジネスに必要だとAdobeは述べています。

AdobeはMarketing Cloudのプロダクトラインナップにおいて、上記を実現することを可能にしている一方、今回のカンファレンスでは新製品の発表はなく、既存製品への機能追加が目立ちました。

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【図】Adobe Marketing Cloud 最新プロダクトラインナップ

各セッションではどのようなことが行われたか?

参加者は10,000人以上と昨年に比べて1.5倍と大幅に増えています。
国内のデジタルマーケティング関連イベントに比べて、同じ領域に携わるマーケターの数の多さに圧倒されました。セッションの数も圧倒的で、以下の9ジャンルにわけて239のセッションが行われました。

①CORE SERVICES
└データ管理やデバイス横断でのユーザ管理

②DIGITAL EXPERIENCE MANAGEMENT
└組織運営やエコシステム、戦略論

③EMAIL & CROSS-CHANNEL MARKETING
└主にAdobe Campaign を用いたメールマーケのケース紹介

④HANDS-ON LABS
└Adobe Marketing Cloud各プロダクトの運用者向け具体的TIPS紹介

⑤MARKETING ANALYTICS
└データ解析・応用事例紹介

⑥MARKETING INNOVATIONS
└ブランド戦略・IoTへの活用など今後の展望

⑦MOBILE ENGAGEMENT
└モバイルサイト/アプリに特化した戦略論・データ活用事例

⑧PERSIONALIZATION AND OPTIMIZATION
└主にAdobe Targetを用いたパーソナライズ・最適化施策の手法論と事例

⑨PROGRAMMATIC ADVERTISING
└DMPやAdobe Media Optimizerを用いた顧客獲得広告戦略・運用手法論

今回のSummitに参加して何を感じたか?

今回参加して感じたことを3つにまとめました。

▽ソリューション導入の是非ではなく、組織運営にフォーカス

“Governance”や”Transformation”といったキーワードが多く、大規模な顧客データを活用してパーソナライズを行っていくという次元から、どのような体制✕スキルにより、社内のデータ統合、蓄積、管理、分析、を行い、さらに企画、設計、コンテンツ管理、制作、実装、リリース、テスト、運用、メンテナンスを行っていくか。それらを横串で実現するために必要な能力とツールはなにか、人が入る部分、自動化する部分の見極めはどうするか、そういった推進フェーズの各論について、導入企業とコンサルタントが事例を紹介するセッションが多く見受けられました。

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【図】Royal Bank of ScotlandではデジタルマーケターをDJとして表彰

▽外部コンサルタントによる運用設計・組閣推進を行うプレイヤーの台頭

セッション登壇者の半分はAdobeのスタッフでしたが、それ以外は主に以下の5つに分類出来ます。

  1. 大手経営コンサルティングファーム:
      Accenture, Deloitte Digital, PwCなど
  2. デジタルマーケティングコンサルティングファーム・解析: 
      Infosys, TATA CONSULTANCY SERVICES, CSC, Atmosphere Research Groupなど
  3. ADエージェンシー:
      Publicis, SapientNitro,Axis41, Isobarなど
  4. Adobe製品を主とした導入・運用サポートコンサルティングファーム:
      iCiDigital,Analytics Demystifiedなど
  5. メディア、ソリューションプロバイダ:
      LiveFyre, Facebook, Instagram,  Pinterest, NetAppなど

そのなかでやはり特徴的だったのは、①経営コンサルティングファームのデジタルマーケティング領域でのプレゼンスの高まりです。
国内でも①に部類するコンサルティングファームによるWeb制作会社やUXコンサルティングファーム買収のニュースなどが最近増えています。
上記で述べたような、「デジタルマーケティングをビジネスの打ち手でなく、中心に据える組閣変更」にあたってはトップレベルから変えていく動きが求められていますし、それらを成功事例として推進していくAdobeのシナリオが感じられました。

▽増えつづけるタッチポイントに対して挑戦を増やしていくフェーズ???

最後は、「AI」、「IoT」といったまだハイプサイクルでいう死の谷を超えていないキーワードに対して、Adobe Marketing Cloudでの実現・連携をアピールする場面が多々見られました。

IBM Watsonとの連携事例:“Evolving to experience intelligence in the cognitive era” by IBM Intelligence Experience といったセッション、基調公演においてもアパレルショップで服をそのまま決済できる仕組みのデモなど、すぐに自社のビジネスアナリティクス基盤と連携出来る世界が来ていることをアピールしていました。

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