UXSTRAT USA 2017に行ってきました

UXSTRAT USA 2017に行ってきました

こんにちは、サービスデザイナーの反中(たんなか)です。

ずいぶん前になってしまいましたが、9月にアメリカで開催された「UX STRAT」というイベントに参加してきたので、その内容をシェアします。

UX STRATとは?

UX STRATとは、UX Strategy、つまり「UX戦略」のこと。その名の通り、「UX戦略」をテーマにしたイベントです。
Paul Brianさんという方が個人で立ち上げたイベントで、今年で5年目となっています。

UX STRAT公式サイト

特徴は、シングルトラック(同時並行で複数セッションを回さず、全員が最初から最後まで同じセッションを聞く形式)であること、実際の企業での事例が中心で、かなり踏み込んだ内容までシェアされること。

登壇者の一例を挙げると、
● Google
● Amazon
● Facebook
● Disney
● Dropbox
● Salesforce.com
● CapitalOne
● Mozilla Corporation
● 3M Company
などなど、錚々たる面子となっています。

「個別プロダクトのUXデザイン」を超えて〜全体を通して感じたテーマ

全体を通して印象的だったのは、個別のプロダクトやサービスのUXデザインやUX改善、というレベルにフォーカスしたセッションがあまり多くなかったことです。

それよりも、
● そうしたプロダクトを生み出すための「組織・プロセス」のデザイン
● プロダクトも含めたより大きな「エコシステム」のデザイン
について言及したセッションが多く見られました。

プロダクトのUXデザインはできて当たり前、いかに再現性、継続性を高めるか、というところが「UX戦略」の要だと言えるのかもしれません。

また、個別で気になったトピックとしては、
● UXデザインとプライバシーのデザイン
● デザイン(業界)におけるジェンダーバイアスの問題
● AI(人工知能)とUX デザイン
といった内容も取り上げられており、こうしたテーマが来年以降のメインイシューになりそうな予感もしています。

簡単に図示すると、以下のようになるかと思います。

あくまで私個人の視点からのまとめではありますが、UXという分野のホットイシューを捉えるヒントになるのではと考えています。

「Amazon Prime Now」立ち上げ秘話〜最も印象的なセッション

ここで全てのセッションを紹介するのはなかなか大変なので、私が個人的に最も刺激的だったセッションを1つご紹介します。

Amazon Prime Now(注文したら1〜2時間で届く、即日配達サービス。日本でも東京など主要都市で利用可能です)のローンチのストーリーです。

ジェフ・ベゾスからのオーダーは、「即日配達」ということだけ決まっている状態から、「90日でローンチせよ」というもの。とんでもないオーダーですが、実際に彼らのチームは、(90日は無理だったものの)111日という短期間でローンチしてしまったそうです。

なぜそんなことが可能だったのか。3つのポイントを挙げて説明していました。

1.Working backwards(逆算して考える)
ゴール(目指したい顧客体験)から逆算して考える。最初に「このサービスがリリースされたときの、とある顧客のストーリー(物語)を描き、象徴的な写真なども用意して、全員のゴール認識を揃える。次に、「それを実現するために必要なワークフローとは?」を考える。制約から考えないこと。

「Prime Now」が実現された世界のユーザーストーリーを物語調で書き起こすことで、目指したい世界を可視化&共有化

2.Single-threaded leaders & team members(シングルスレッドなリーダーとチームメンバー)
期間中フルコミットで、クロスファンクショナルなチームを編成する。常設のプロジェクトルームも用意して集中して「シングルスレッド」で取り組める環境を作る。

初期フェーズからデザイナー・エンジニアががっつり関わり、精度の高いモックを作りながら進めていく

3.Knowing your one-way & two-way doors(一方通行のドアと行ったり来たりできるドアを見分ける)
やり直しのきかない意思決定(1-way)と、試行錯誤可能なプロセス(2-way)を切り分けること。前者は意思決定までに時間をかけるが、後者はとにかくいったん作ってみる。

スピーディにプロダクトやサービスを作るためには、小さく、完結した、クロスファンクショナルなチームを作ることが大事ということ、そしてそれを、Amazonほどの超大企業で実践できていること。
そのことは、我々リクルートテクノロジーズでの日々の仕事の進め方はもっともっとよくできると感じさせる、大きな衝撃でした。
あまりに印象的だったので、帰国してからも、社内外で会う人会う人にこの話ばかりしていた記憶があります(笑)

その他にも魅力的なセッションがたくさんあり、紹介しきれませんが、こちらのスライドシェアにいくつかのスライドはアップされているのでぜひ見てみてください。
また、プレゼン動画もおいおいアップされるようです。

最後に〜ボルダーはよいところでした

最後におまけですが、今回の開催地となったのは、コロラド州ボルダー。日本ではあまり馴染みがないですが、標高1200mと高いことから、マラソンなどの高地トレーニングの地として有名だそうです。また、コロラド大学ボルダー校をはじめとした大学街という趣きで、こぢんまりとしつつも文化の匂いを感じる、とても素敵な街でした。(どことなくボストンに近い雰囲気も感じました)

来年以降もボルダーで開催するかも、とのことだったので、その面でも興味ある方はぜひ参加を検討してみてください。
今回は日本からの参加は私含めて(おそらく)3名だけだったので、今後はもっと増えていくと嬉しいな、と思います。