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リクルートのデータ推進室で、飲食・ビューティー・旅行領域のデータマネジメントに向き合う木内 雄也。金融機関でデータ基盤開発に携わった後、2022年にリクルートへキャリア入社。現在は複数領域を横断するデータマネジメントグループのGM(グループマネジャー)として、分析基盤の開発・運用とデータ利活用の推進を担っています。

社内の意思決定に必要な情報を、品質高く、迅速かつ安全に届ける。そうした役割を担うデータマネジメントの現場から、木内にキャリアの原点やリクルートへの挑戦、変化するデータ組織の役割、そしてAI時代におけるデータと人の価値について話を聞きました。


木内 雄也

経歴:
2014年に金融機関へ新卒入社し、データ基盤の開発・運用に携わる。2022年にリクルートへキャリア入社し、飲食領域のデータ利活用を担当。現在はデータ推進室の飲食・ビューティー・旅行データマネジメントグループのGMとして、各領域における分析基盤の開発・運用とデータ利活用を推進している。

原点は「触覚の研究」。作って、届けて、対話から改善する面白さ

― まずは、木内さんの原点について伺います。学生時代はどのようなことに熱中されていたのでしょうか。

学生時代は触覚の研究をしていました。錯覚を利用した仕組みで、2本のワイヤーを両手で挟んで前後に動かすと、ものすごく気持ちいい触感が得られるんです。それを使ってマッサージ機のような装置を作っていました。自分にとっては、それが“ものづくり”の最初の原体験です。 自分で何かを作り、誰かに体験してもらい、フィードバックをもらって改善する。学会や研究の場では、ポジティブな反応もあれば「全然意味がわからない」といった率直で厳しいフィードバックを受けることもありました(笑)。そうした他者からのフィードバックに向き合って改善していく経験は、間違いなく今の仕事にもつながっていると思います。


目に見えないシステムだからこそ、大きな影響を与えられる

― 大学院卒業後は、金融機関のデータ基盤開発へ進まれました。銀行では具体的にどんな仕事を担当されましたか?

社内向けの情報系システムで、データを持ってきて加工し、画面に表示するところまで一連の開発を経験しました。バッチ処理やデータ加工、表示まで自分で手を動かして覚えていきました。

金融機関ならではの難しさは、数値の正確さへの厳しさでした。レポートの集計値と上流システムのトランザクションデータが整合するかどうかを、レコード単位で突き合わせていく数値検証を担当していたんですが、国によってシステムが全然違うので、まず大元の明細がどこにあるのかを特定するところから始まる。数字に食い違いがあればその原因を徹底的に調査していました。今思うと、データの品質に徹底的に向き合う感覚は、あの頃に身についたと思います。

専門性を深めながら、事業の中核に踏み込める環境を求めて

― 8年のキャリアを経て、2022年にリクルートへ転職されましたが、どんな経緯があったのでしょうか?

実はもともと転職意欲がそんなに強かったわけじゃなくて、プロジェクトが一段落したタイミングで「ちょっと市場を見てみようかな」くらいの気持ちだったんです(笑)。当時リクルートでは、「アナリティクスエンジニア」という職種が定義され始めていて、それまで自分がやっていた仕事もデータ品質や意思決定に必要なデータ整備に向き合うものでしたが、どんな職種なのかが自分の中で曖昧でした。リクルートではその役割をいち早く職種として定義し、必要な技術や育成まで含めて考えようとしていた。そこに惹かれました。

もう一つ大きかったのは、「事業との近さ」と「仕事の幅」です。事業会社の中で、プロダクトや事業の成長のために技術的に何ができるかを考えられる。専門性を活かしながら、幅を狭めずにいろいろなことに挑戦できる環境だと感じました。

リクルートでは、企業や事業が目指したい姿や成長戦略を踏まえて「データとして何ができるか」を考え、施策を立て、計画し、実行するところまで求められます。上流も含めてやりたいこと、やるべきことを打ち立てて実行に移せる。そこが前職との大きな違いであり魅力でした。

― 今は飲食・美容・旅行領域のデータマネジメントグループのGMを担当されています。この仕事を自分の言葉で表すとどんな仕事ですか?

社内の意思決定に必要な情報を、どれだけ品質高く、素早く、安全に提供できるか。それを仕組みとして提供する「プラットフォーマー」のような仕事だと思っています。データは「あって当たり前、正しくて当たり前」と思われるものです。しかし実際には、正しい情報を届け続けるにはデータの構造や品質、定義、文脈をきちんと整える必要があります。

最近では、AIを使って社内の意思決定を高速化する取り組みも進んでいます。ただ、データをそのまま流し込むだけではミスが起きます。それは人でもAIエージェントでも同じです。だからこそ、どういうモデリングをすればAIエージェントが見やすいのか、データだけでは見えない文脈をどう渡すのかが重要になります。

例えば『ホットペッパーグルメ』などで追っている指標にも定義があります。その定義を、誰が見てもブレない形で整備し、人間のユーザーだけでなくAIエージェントも同じ定義を参照できるようにする。そうした基盤をつくることが、難しさでもあり果たすべき使命だと思っています。

数日かかっていた分析を「30秒」で返す。AIエージェントが変えた意思決定のスピード

― データが事業の意思決定に大きなインパクトを与えたと感じる事例はありますか?

一番大きいのは「分析エージェント」の取り組みです。これまでは意思決定に必要な情報を集めるために事業担当者からデータ組織へ依頼が来ていました。SQLを書いたりモニタリングダッシュボードを作ったりして提供していたため、1つの分析に数日要することもありました。

それが、分析エージェントを導入したことで、Slack上で自然言語で質問すると、30秒ほどで分析結果が返ってくるようになりました。これにより、意思決定のスピードは何十倍にもなっていると感じています。例えば、プロダクトマネジャーが「今日『ホットペッパーグルメ』を使ってお店を予約したユーザーは何人か?」とSlack上で聞くと、分析エージェントが分析結果を即座に返します。これまでBIツールで自分で調べるかデータ組織に依頼する必要があったものが、自然言語で解決できる価値は非常に大きいと感じています。

― 事業担当者にとっても劇的な変化ですね。そうやって分析の「自動化・高速化」が進んだことで、データ組織自身の役割や向き合うテーマにも変化はありましたか?

大きく変わりました。これまでは依頼された分析対応などの定型業務に追われがちでしたが、AIエージェントの活用によって、定型業務以外に割ける時間が増え、Slackやドキュメントにある「非構造化情報」の活用へと視野が広がりました。それらの情報をどう蓄積・管理し、改善の仕組みをつくっていくか。単に依頼に応えるだけでなく、自分たちで課題を見つけてエンジニアリングで解決していく、能動的な動きができるようになっています。

― 事業担当者から依頼されたデータを出すだけでなく、木内さんの組織から見方を提案することもあると。

よくあります。実は、事業担当者自身が見るべきデータを正しく把握できているケースばかりではありません。依頼されたものをそのまま出すだけだと、意思決定を間違えることもあります。だから「何を解きたいのか」「どのデータをどう見るべきか」を一緒に考えることがほとんどです。そして、事業に対する理解が同じレベルでないとこうした提案はできません。単に「このデータが見たい」と言われてから関わるのではなく、前段の戦略議論から入っていくことが大切だと思っています。

現在は、AIエージェントの利活用が進む中で「どのようなコンテキストやデータが必要か」を自ら定義し、事業担当者と議論を重ね、技術的なアーキテクチャまで含めて主導的に作り込める体制へと進化しています。

AI時代だからこそ、「コンテキスト」を読み解く人間ならではの力が価値になる

― これからのAI時代において、データマネジメントで重要になるテーマは何でしょうか。

一番重要なのは、やはり「コンテキスト管理」だと思っています。今までは、テーブルやカラムとして存在する構造化データを扱うことが中心でした。でもこれからは、そのデータが何を意味するのか、どういう文脈で使われるのか、という情報を整備することが不可欠になる。これまでは個人のナレッジやメモ、会議の会話として残っていた情報を、これからは「コンテキスト」として共通認識化し、管理・整備していく必要があります。

― 単にデータを整えるだけでなく、背景にある会話や「文脈」まで紐解いていくわけですね。そうした難度の高い整備をやり切るには、どんな力や姿勢が重要になってきますか?

まずは泥臭く深く切り開いていく力です。表面的に分かるところだけでなく、その背景にある理由や構成の経緯まで惜しまず探しに行く労力が必要です。次に、それを整理して構造化し「事業としてこの認識を共通で持っていこう」と合意形成していく力です。飲食も美容も旅行も、長年の蓄積があるため非常に「カオス」です。泥臭く切り開いてまとめ、合意形成していく対話力と、そのカオス自体を楽しめるかどうかがポイントになると思います。

― AI時代における、人間の役割とは?

定型的な仕事や単純な判断は、今後ますますAIでの実行が可能になってくるはずです。その時、人間の価値は「AIの出した判断にあえて疑いを持つこと」や「まだデータになっていない感覚、人と人との関係性に向き合うこと」に残ると思っています。AIは過去のデータから最も確度の高い解を出してくれます。しかし、AIの判断はあくまで機械的に提示されているものにすぎず、人間が感覚や直感、対話をもとにあえて違う意思決定をすることもある。データ化できない定性的な領域に向き合えることこそが、これからの人間に求められる価値だと考えています。

カオスを楽しみ、違いを価値に変える仲間とともに

― 今後、ご自身の組織にはどのような人がフィットすると思いますか。

変化が激しい状況の中で、カオスを楽しみながら自分自身の価値とやりたいことをアップデートしていける人ですね。そして、アップデートを個人にとどめず、組織全体で目標に向けて高め合っていけたらと思っています。使う技術や志向性が一人ひとり違うのは当然ですし、むしろみんなの考えが異なること自体も一つの面白さです。その違いを互いに楽しみながら、一人ひとりが自分らしい形で力を発揮し、ともに成長していける。そんな文化をこれからも組織の皆でつくっていきたいです。

― 最後に、技術的な深さと事業へのインパクトの両方を求めるデータスペシャリストに向けて、この組織の魅力も教えてください。

事業担当者から見たデータマネジメントへの要請はどんどん上がっています。コンテキストやデータ自体をどう整備していくかによってAI時代の意思決定の質が変わるため、注目度は非常に高い。また、飲食・美容・旅行といったようなクロスドメインで各領域の知見や技術スタックを共有し、仲間同士で成長していける環境でもあります。

さまざまな事業背景やフェーズがある中で、技術的に面白いことや今やるべきことを個人として持ち出し、全体で議論しながら進めていける。自分自身でテーマ設定や課題設定をして挑戦したい人にとって、とてもやりがいのある環境だと思います。

阿部 奈保子

プロダクト企画統括室

阿部 奈保子

技術広報や採用ブランディングを担当しています。