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リクルートのデータ推進室にて、飲食領域のデータサイエンティストを統括するグループのマネジャー(取材当時。2026年10月より飲食・ビューティーデータソリューション部長)を務める吉鷹 伸太朗。大学4年生の時にデータサイエンスと出会ってから約10年。裁量の大きい事業会社を求めてリクルートへ入社後、『ホットペッパーグルメ』のレコメンド機能をゼロからつくり、次々とその機能を発展させてきました。

「事業を良くするために必要なことを何でもやる」その仕事への姿勢の原点を紐解きます。


吉鷹 伸太朗(よしたか しんたろう)

経歴:
学部時代はプロテニス選手のパフォーマンス分析を目的とした時系列データ可視化の研究、修士課程では岩盤工学の研究室にてデータサイエンスを応用した研究を行う。2019年にリクルートライフスタイル(現リクルート)へ新卒入社し、現在は飲食データソリューショングループのマネジャー(取材当時。2026年10月より飲食・ビューティーデータソリューション部長)を務める。プライベートでは家庭(家事・育児・愛犬の世話)と仕事の両立を意識しているほか、日本史に興味があり、歴史の変遷から得た知見を現在の仕事にも活かせると考えている。

データ分析の原点と、リクルートを選んだ理由

― 吉鷹さんの原点を教えていただけますか?

吉鷹:学部4年生のころに研究室のメンバーと一緒にデータコンペティションに出たりしたことが原点です。

その後、修士課程ではシステム創成学の別の研究室に移りました。本来は岩盤工学という岩の研究をする研究室だったのですが、「データ分析をさせて欲しい」と頼み、ゼネコンと一緒に研究をしました。埼玉県秩父にある武甲山という石灰石鉱山の岩壁の変形挙動を10年分ほどデータで取るような研究です。教授の専門外だったので、他研究室の先輩などいろいろな人に意見を求めながら勉強を進めました。

― そのまま就活されたと思うのですが、アカデミックに残る道や他社もある中で、リクルートを選んだ理由は何だったのでしょうか?

吉鷹:学生時代にデータ系のコンサル会社でアルバイトをしていて、基本的には応用やビジネスに興味があったので、アカデミックに残ることは考えませんでした。就活ではコンサルティング会社か事業会社のデータ職種かで悩んでおり、最終的にはリクルートに決めました。

理由は大きく2つあります。1つは、アルバイト時代の経験も踏まえ、自分でデータをもとに意思決定して物事を動かしていきたいという思いが強くなったことです。

2つ目は、2019年ころはまだデータ職種がまとまった組織がある会社が少なく、リクルートにはそれがあったこと。そして、当時の人事が丁寧にアフターフォローしてくれて、育成などをきちんとやってくれそうだなという肌感覚を持ったことです。

案件ゼロからの挑戦――「隙間」を埋める当事者意識

― 入社後、最初に感じた面白さや難しさはありましたか?

吉鷹:端的に言うと、当時は飲食領域に関するデータ案件がありませんでした。当時は美容や旅行などの領域でデータ活用が進んでおり、飲食領域においては開拓の余地が大きい状態でした。なので他案件を参考に、新しくレコメンドを作る案件などをチームリーダーと一緒に立ち上げました。

飲食ドメイン自体の難しさとしては、市場の変化が非常に速く、競争の激しい環境であること。そしてクライアント(店舗)数もカスタマー数もリクルートの事業の中でもかなりの規模となり、掛け算すると組み合わせが非常に多くなることです。さらに「パートナーと行くのか、家族と行くのか、上司と行くのか」といった「来店シーン」によって、一人のユーザーでも好みの店舗が変わってしまうという変数の多さがすごく難しいなと感じました。当時はそこまで考慮できず、過去の行動履歴から単純に予約しそうな確率を出してサジェストしていましたが、今はアプリ上でシチュエーションを聞いたり、動画配信サービスのアプリのようにさまざまな軸のレコメンドを提示して直感的に選べるように工夫しています。

― 現在は飲食領域全体を見られていると思いますが、ご自身の役割やスタンスを一言で表すと何になりますか?

吉鷹:「事業を良くするために何でもやる」ですね。そのために環境も整えるし、方向性も事業側と合意します。結果としてデータサイエンティスト的な仕事じゃなくても、他にやる人がいなくて、自分がやれば一番効果が出るならやる。そういう隙間を埋める人なのかなと思っています。

データ職種としてはあまりないことかもしれませんが、データ案件を一から提案してデザイナーやエンジニアをアサインしてもらい、自分がオーナーとして案件を回すようなこともやっていました。

― データサイエンスが原点だと思いますが、エンジニアリングなどの知見は、どうやって獲得したのですか?

吉鷹:ベースは、学生時代のアルバイトで先輩に鍛えてもらいました。入社後は、実務に携わりながら詳しい人にレビューしてもらったりして学びました。1年目のころは、データベースのことがわからないので、担当のエンジニアの方の席まで行って質問攻めにするのを日課にしていました。「このデータ定義おかしくないですか?」「いやおかしくないはずだ」とやり取りして、結果的にバグを発見したりしていましたね(笑)。

― すごい当事者意識ですね。その際に工夫した点などはありますか?

吉鷹:立ち上げ初期はまだデータ組織としての実績が少なかったため、提案の意義を理解してもらうための対話や実績作りに注力しました。また「まずは小さく成果を出し、信頼を積み重ねよう」と考え、自ら手を動かして推進し、そうして一つひとつ小さな成果を積み上げながら協力を得ていきました。

当時、私が起案した「シーン訴求レコメンド(アプリのホーム画面下部にレコメンドを入れる施策)」が効果を生み、そこから大々的なレコメンド画面を作る「マッチングプロジェクト」が誕生、さらに検索基盤を作り直そうという話になり、今携わっている「席押さえ(現在地から今すぐお席を確保できるお店を予約できるサービス)」につながっていきました。最初は2〜3人だったチームが、今では20人以上の大きなチームになりました。

事業と開発を繋ぐ「ブリッジ」として

― レコメンドや検索機能を進化させていく中で、事業側からの指示で動くのか、データ組織から提案するのか、どのような関係性ですか?

吉鷹:完全に二人三脚ですね。「席押さえ」のプロジェクトでは、プロダクトマネジャーやプロダクトデザイナーなど各職種が集まり、顔を合わせて一緒に進めています。今は新規開発フェーズなので、分業するより一緒に動いた方が早い状態だと思っています。

ただ、ずっと一緒にいると背景を知りすぎてしまい、「直感的に正しくなさそうな意思決定」でも進めてしまいそうになる難しさがあります。なので意識的に肯定バイアスを排除して批判的にレビューできるよう、第三者的な視点を持つように心がけています。

― 他組織との協業で、意識されていることはありますか?

吉鷹:関係各所との事前の目線合わせは非常に大切にしています。他組織のマネジャーや組織長と事前に背景や課題意識を丁寧に共有したうえで、事業にとって本質的だと考える提案は粘り強く対話を重ねて合意形成してきました。

あとは、自分が関わっていない案件でも他組織から頼まれたら快く応じたりして、信頼残高を蓄積するのも大事だと思います。当時は打算的というより純粋に事業のためでしたが、結果的にその時に構築した関係性が活きています。

また、品質担保とリリーススピードのバランスを取るため、システム構造を見直してデータ組織側で引き受けられる品質責任の範囲を広げるなど、エンジニア組織の負荷を軽減しながら全体の事業スピードを最大化する調整を行っています。UIに関わる部分は各職種と密に連携しながら進めています。

― 大きな裁量を持つ分、プレッシャーも大きいのではないですか?

吉鷹:大きなリリースをする時は毎回「バグがないか」「障害を起こしたらどうリカバリーするか」などと常に緊張感をもって臨んでいます。また、事業的に何が正解かわからない中で、グループマネジャーである私が自信を持って「これでいく」と決めないとメンバーも自信を持てません。最終的に「これがよいと思うからこれでいく」と決めている部分もありますが、最後は自分がグループの責任を取るつもりで前に進めています。データソリューショングループが裁量を持つには、言われたことをただやる「請負組織」になるのではなく、「本質的にはこうじゃないですか?」と提案し、実績を積み重ねて相手の期待を上回っていくことが前提条件だと思っています。

意志ある人に、最高の「打席」を

― 今後のために、何か勉強されていることはありますか?

吉鷹:データ系の勉強はもちろんとして、それ以外の勉強としては、今はマネジメント論や組織論を学んでいます。いかにチームの成果を最大化していくかという観点で、最近は「コンテキストリーダーシップ」が面白かったですね。メンバーの状態や事業の状況といった「コンテキスト」に合わせて、背中を見せるのか、放任して任せるのかなど、リーダーシップの形を適切に切り替えていく必要があるなと考えています。

― 最後に、今後ご自身の組織にはどのような方がマッチすると思われますか?

吉鷹:やはり「自発的に何かをしたい」という当事者意識を持っている方が一番活躍しやすいのかなと思っています。ビジネスに対してこうしたい、技術的にこういうことをやりたい、といった意志を持っている方ですね。飲食だけでなく美容や旅行など、領域ごとに必要なケイパビリティは異なるので、何かを成し遂げたい、事業を良くしたいという思いがある方には、最適な「打席」をご提供できると考えています。

※組織名・肩書は取材時点のものです
大磯 春佳

プロダクト企画統括室

大磯 春佳

データ推進室の技術広報や採用ブランディングを担当しています。