Recruit Data Blog

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目次

はじめに

こんにちは、横断データソリューショングループで最近は人材領域の分析推進を担当している西村直樹です。

本記事では、2022年2月17日に実施された RECRUIT TECH MEET UP #4 の後半にて報告した「数理最適化技術活用のための取り組みと事例」について、イベント中で話しきれなかった補足も加えて紹介します。

RECRUIT TECH MEET UP #4 は、「競技プログラミングとリクルート~開発現場で活きる知識とは~」というテーマで実施されたイベントでした。前半ではリクルートが開催してきた競技プログラミングコンテストの実施背景や、競技プログラミングで養われる技術がどのように実務に活かされるかについて田中伸明さんより報告がありました。

前半も含めた本イベントが書き起された記事も公開されましたので、是非そちらもご参照ください。

リクルートが取り組む「競技プログラミング」「数理最適化技術」プロジェクトの舞台裏──RECRUIT TECH MEETUP #4

取り組みの背景

リクルートには、スタディサプリ、タウンワーク、リクナビなど複数の事業領域があり、概ねそれぞれの事業領域ごとにデータ分析を担当するグループがある、という構造になっています。 以前と比べて、各事業領域で機械学習技術を用いた商品推薦などの予測のタスクはどの領域でも多く実施されるようになりました。

a グループ企業一覧

しかし、すべてのデータソリューション関連の技術について、どの事業領域でも十分に活用されているというわけではありません。技術の一例として、数理最適化の技術については、解くべき課題を計算機で解ける形の問題としてモデリングする部分にハードルがあるためか、予測のタスクと比べると社内での活用実績は少ないです。

そのような背景のもとで、横断データソリューショングループのメンバーとして「数理最適化案件の横断的な解決と創出」という職責の一部にて実施している大阪大学の 梅谷俊治先生 との取り組みと活用施策について報告をしました。

取り組み① 数理最適化案件相談会

数理最適化案件相談会は、2018年度頃から個別案件について実施していた、梅谷先生と共同研究案件について議論する場を拡張したものです。最近では月次の頻度で、毎回4〜5種類程度の数理最適化に関する事業課題を担当者が代わる代わる共有・議論していく、という形で相談をさせていただいています。

事業領域が複数あり、技術的バックグラウンドをもつメンバーがすべての事業領域の課題をサポートするのが難しい状況で「この案件相談会に来てもらえれば専門的な助言を受けることができる」と気軽に伝えられたことで、社内メンバーだけではアプローチしきれなかった範囲まで案件探索を広げることができたと感じています。

案件相談の場で継続的に議論させていただいた案件のいくつかは、課題解決がなされ実際のシステムに組み込まれ成果をあげました。また課題解決に加えて、案件相談にオブザーバーとして同席したメンバーも課題解決のためのテクニックなど新たな知見を得ることができるという利点もありました。案件相談の過程で、同席したバックグラウンドをもったメンバーが案件参画し、システム実装なども含めて協働で解決した事例もありました。

取り組み② 数理最適化セミナー

数理最適化セミナーは、梅谷先生に講師をお願いしている社内セミナーです。このセミナーは、昨年から携わらせていただいている、 「数理最適化寄付講座」 の取り組みの一環で、数理最適化技術の普及および専門家の育成を目的として昨年より隔週の頻度で開催しています。

セミナーでは、事例紹介などの案件企画者も対象にする回と、実装者向けにアルゴリズムなどの詳細も扱う回を区別してアナウンスして、興味があるものに参加してもらう、というようにしています。またセミナー終了後には、セミナー内容以外も含めたカジュアルな相談の時間を設けており、そこでの相談からより詳細を議論したいものは案件相談へ持ち込んでいただく、というような流れで案件探索にもつながっています。

最近では、有志のメンバーでセミナー内容を復習しながら詳細を議論する会も実施されており、改めてそこで出てきた疑問を次のセミナーで質問させてもらい理解を深める、というようなこともありました。

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数理最適化活用施策の紹介

イベントでは、5つの事例ついて課題背景とアプローチの概要を紹介しました。

  • 事業制約を考慮したメール配信、レコメンド
  • 費用制約を考慮したインセンティブ1配信
  • フリーペーパーの配送計画
  • テレビCMの配信枠への割当
  • キッチンモニターでの調理順サジェスト

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これらの事例の詳細については、何回かにわけて@ITにて連載される予定です。第1回は、 数理最適化を用いたキッチンモニターでの調理順サジェスト を開発した須藤遼介さんが「数理最適化の概要、リクルートにおける4つの応用事例、実問題適用への手順、機械学習との違い、使い分け方」について執筆しており、以下に公開されています。第2回以降は、より具体的な案件課題に対するアプローチについて公開される予定です。

「数理最適化」とは――4つの応用事例、実問題適用への手順、機械学習との違い、使い分け方

おわりに

本記事では、産学連携により社内の複数の事業領域での数理最適化の課題解決、案件探索を目指したこれまでの取り組みについて紹介しました。来年度も課題解決と案件探索の新たな取り組みを計画しており、それについてもまた紹介できればと思います。

また、本記事では数理最適化技術に焦点をあてましたが、他のデータソリューション技術についても社内だけでなく社外の専門家とも協働して広く案件課題を解決していければと感じています。

取り組みや事例の詳細について興味をもっていただけた方、課題解決、案件探索についてディスカッションしてくださる方は、ぜひカジュアル面談させていただけると嬉しいです。

カジュアル面談 お申し込みフォーム

一緒に課題解決、案件探索に取り組んでくださる方も募集しています。

リクルート 学生向けキャリアサイト
株式会社リクルート 中途採用サイト


  1. ポイントやクーポンなど ↩︎

Naoki Nishimura

シニアデータサイエンティスト

Naoki Nishimura

2021年に「Pythonではじめる数理最適化: ケーススタディでモデリングのスキルを身につけよう」を共著で執筆。神奈川よりの東横線沿線に住んでます。