Recruit Data Blog

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目次

これまで培ってきたソフトウェアエンジニアとしての技術力は、データエンジニアリングの世界でどう活きるのか。

今回の連載では、ソフトウェア開発のバックグラウンドを持ちながら、現在はリクルートのデータ推進室で「データエンジニア」と「アナリティクスエンジニア」として活躍する2名のメンバーのリアルな声をお届けします。

前編に登場するのは、長年ソフトウェアエンジニアとして第一線を走ってきた池田泰之です。なぜ彼は現在データエンジニアという道にたどり着いたのか。そして、リクルートという環境でどうスキルを拡張しているのか。上長の鶴谷とともに、これまでの歩みと仕事の醍醐味を語りました。

(写真左:池田 泰之  写真右:鶴谷 誠文)

池田 泰之
データプラットフォームユニット 所属。ベンチャー企業、大手系列IT企業、大手ゲーム会社を経て2023年リクルートに入社。領域横断でのデータ基盤構築やエンジニアの足回り整備・開発環境の最適化を担う。

鶴谷 誠文
データプラットフォームユニット ユニット長。証券系SIerを経て、2015年にリクルートに入社。組織マネジメントを行う傍ら、データ活用基盤の戦略立案やエンジニア組織の強化を推進している。

ネットワーク構築に夢中になった学生時代

鶴谷:池田さんとは普段から業務の話をしていますが、今回はキャリアに関する対談として改めてお話を聞かせてください。大学時代はPowerPC CPUを搭載したOpenBlockSという小型サーバーを使ってネットワークを組んで試行錯誤されていたそうですね。当時はどのような勉強や研究をしていたのですか?

池田:趣味の延長だったのですが、父がIT業界にいて小型サーバーを買ってきたのがきっかけでした。上京後、秋葉原のショップに通う中でOpenBlockSを知り、自室で自由にネットワークを組める環境が整ったので、自分でサーバーを立ててみようと思いまして。2000年代初期当時はIntel製CPUが主流でしたが、PowerPCを使ったOpenBlockSで、DNSサーバーやWebサーバー、ADSLのPPPoE接続用サーバーなどを動かして公開していました。

鶴谷:なるほど。確かに自分も、働き初めの頃は自宅にサーバーを置いて勉強していた記憶があります。その学生時代での探求や試行錯誤の経験で、今のお仕事に活きていることはありますか?

池田:PowerPC環境でWebサーバーを動かす際、適切にコンパイルしてバイナリを作らないと動かないという仕組みを知らず、最初はまったく動かない壁にぶつかりました。その際に、ユーザーコミュニティの掲示板やドキュメントを読み漁りながら設定を変更し、「動かない原因を突き止めて直せば絶対動くはずだ」と深掘りしてトラブルシューティングする度胸を培いました。その体験は今も大きな財産となっています。

鶴谷:確かに、今の仕事でもクラウド環境で複雑なソフトウェアを動かして「なぜ思い通りに動かないんだ」となった時に、ソースコードやミドルウェアの深部まで見に行って自力で直す、ということを自然とされていますよね。まさにその原体験なんですね。

池田:はい。ソフトウェアって規模が大きくなると全体を把握するのは大変ですが、実際におかしくなっているポイントは特定の場所だけなんですよね。「多分この辺のレイヤーやモジュールがおかしいんだろう」と当たりをつけて、問題点だけを的確に探り当てる作業は、この時の経験が活きていると思っています。


ベンチャーから大手、ゲーム業界を経て学んだエンジニアの本質

鶴谷:その後就職した1社目のITベンチャー、2社目の大手系列IT企業、そして3社目の大手ゲーム会社までのキャリアの歩みや、それぞれの現場で得た学びについて教えてください。

池田:学生時代のアルバイトからそのまま入社した1社目のITベンチャーでは、10〜50人規模の急成長期の中で「明日までに作れる?」という圧倒的なスピード感が求められました。ビジネス側の要求に対して素早く動くシステムを作り上げる実践的なスキルが身についた時期です。当時はWebやメールなどの通信プロトコルがシンプルで、Telnetで直接命令を叩いたりパケットを観察したりと、インフラの生の挙動に触れることが出来た実体験から基礎を学びました。

その後、「大規模開発に耐えうる品質管理や設計手法を学びたい」と考え、2社目の大手系列IT企業へ転職しました。アプライアンス製品やIP-PBXシステム等の開発に携わり、仕様書や設計ドキュメントの作成、チケット管理、網羅的な障害試験といったエンタープライズ開発における基本動作を徹底的に叩き込まれました。また、新規分野の知識を相手が既知の分野の知識に合わせて伝えるコミュニケーション力や、再現性のあるドキュメントづくりの重要性を学んだことも大きな収穫です。

そして3社目として、スカウトをきっかけに大手ゲーム会社へ転職しました。オンライン化が進むゲーム体験を支えるバックエンド基盤の重要性を知り、これまで培った技術がエンタメ最前線でも強力に活きることを実感しました。優秀な同僚と刺激に満ちた環境で過ごす中、個別運用しがちだったゲームタイトルごとのサーバー運用手順を集約し、共通の運用インフラや自動化ツールとして標準化・プラットフォーム化する役割を担いました。他人が作った仕組みを紐解いて「誰もが安全に扱える足回り」へ再構築する中で、抽象化の深さと使い勝手のバランスを模索する面白さを知りました。

リクルートへの転職。データエンジニアとしての挑戦とオンボーディング

鶴谷:3社目では10年近く在籍されていましたが、リクルートへ転職されたきっかけは何だったのでしょうか?

池田:コロナをきっかけとした前職でのリモートワーク移行が転機でした。自分に最適な環境でパフォーマンスを最大化できるスタイルだと確信したのですが、社会情勢の落ち着きに伴い出社回帰の方針となったため、理想の労働環境を維持しようとリモートワークが継続できる職場を探し始めました。

鶴谷:なるほど、効率性を追求する池田さんらしいですね(笑)。数ある選択肢から「リクルートのデータエンジニア」に注目した理由は?

池田:それが偶然といえば偶然です。当初、リクルートは営業やメディアの会社というイメージが強く、自分のインフラや基盤技術のスキルが活きるイメージを持っていませんでした。ですが、転職エージェントからリクルートのマッチングプラットフォームの構造を聞き、ゲーム業界で経験したサーバーロジックと本質が同じだと気づきました。膨大なリアルデータとAIを大規模活用する技術基盤を作る「データエンジニア」の提案を受け、面白い挑戦になると感じて入社を決めました。

鶴谷:そうだったんですね。私も、池田さんとの初回の面談時にとても話が盛り上がったのを覚えています。入社後、データ領域のドメイン知識や技術へのキャッチアップはどのように進めましたか?

池田:現在私が担当しているのは、データ分析そのものではなく、データサイエンティストが作ったロジックやモデルをクラウド上で安定稼働させるサーバー基盤や、自動化ツール等の開発・運用の「足回り」の構築です。 そのため、培ってきたソフトウェアエンジニアリングのスキルがそのまま活かせました。一方で、同僚とデータ分野の共通言語で会話するための専門知識も不可欠なため、Google Cloudの講座や大学の講座を受講したほか、社内事例の読み込みで網羅的にインプットしました。仕組みを体系的に理解できたことが業務上の大きな安心感につながっています。

鶴谷:ソフトウェアエンジニアリングのスキルがあれば十分活躍できる良い例ですね。池田さんが入社後担当してきた業務について、もう少し詳しく紹介してもらえますか?

池田:入社後はまず、新規要件に対応するAWSベースの機械学習基盤「Klaue」の立ち上げを担当し、サービス側がレコメンド等のAPIを標準手順で素早く構築できる仕組みを作りました。その後、機械学習モデルを迅速・安全に本番展開・運用するための共通基盤(開発テンプレートやCI/CD環境)の提供を担っています。

鶴谷:前職でも経験してきたと思いますが、リクルートで大規模組織向けの共通基盤づくりにおける面白さや難しさはどこにありますか?

池田:開発者が多いため、公開すると一気に利用が広がる反面、想定外のエッジケースが発生するほか、スピードの速さから根本設計の修正が困難になる点が最大の難しさです。また、開発者の負担をなくすことばかりに気を取られるあまり、複雑で融通が効かないシステムになってしまい、その後の基盤の成長の妨げになるという場面もありました。負担を減らしながらも基盤が成長しやすい柔軟性のあるバランスの良い基盤を作ることに、難しさと面白さがあると思っています。

鶴谷:確かにそうですね。入社後に特に成長したと感じる部分はどこですか?

池田:マネージドサービスを柔軟に組み合わせ、最適なシステムアーキテクチャを素早く組めるようになったことです。Terraform(IaC)を徹底活用し、自分なりのテンプレートとしてノウハウを確立できました。また、得た知見はConfluence上で積極的にアウトプットし、組織の資産として再現可能にすることを意識しています。

鶴谷:いつも池田さんのドキュメントには助けられています。これまでの経験もあり、サーバーやネットワークといった技術基盤からアプリ・運用まで見通せるフルスタックな視点を持っていますが、その探究心の源泉は何ですか?

池田:これまでも話してきたように、「思い通りに動かない」現象の原因が解明するまで突き詰めずにはいられない性格が根底にあります。学生時代のサーバー構築や、1社目のベンチャーでのトラブルシューティング経験で全体を俯瞰する力が養われ、さらに近年のクラウド技術進化により、インフラ領域までコードで制御・探求できるようになったことが大きいです。

鶴谷:これからもますますの活躍を期待しています。今後リクルートで挑戦したいことや目指すエンジニア像を教えてください。

池田:特定の現場で得た成功体験やコードを汎用化し、組織全体で使える仕組みとして展開するアプローチを続けたいです。「工夫次第で組織全体の生産性を向上できる」という技術的探求を楽しみながら貢献していきたいと思っています。

AI時代におけるエンジニアの価値と「仕組みづくり」

鶴谷:話は少し変わりますが、AIエージェントがコードを自動生成する時代において、エンジニアの価値や役割はどう変わると考えていますか?

池田:本音を言えば、AIが実装業務をすべて代行し、複雑なトラブルなく定時帰宅できる世界が理想です(笑)。

鶴谷:概念設計に集中したいということですね(笑)。ただ、仕事自体はなくならず、開発は自動化された「スマートな生産工場」を作るプロセスに近くなるかもしれないと感じています。AIを活用した効率的な開発ラインを組み上げ、その全体アーキテクチャや仕組みを設計・維持管理することは、人間にしかできない高次元な仕事として残るのでは?と自分は考えています。

池田:同感です。コード実装はAIがこなしますが、「どのHowを組み合わせ、どんな制約下で生産ラインを構築すべきか」という仕組みづくりや設計の需要は変わらないと思っています。

鶴谷:全体像を理解して正しく生産ラインを作れる人材は、むしろ貴重になります。AIは過去データを踏まえた確率的出力が得意な一方、固有の制約下での創造的課題解決は苦手です。だからこそ、AIのコードの落とし穴を見抜き、問題の根本原因を深掘りして突き止める「本質的な探求力・分析力」がより求められると思っています。

池田:そうですね。今後AIもますます進化を遂げ、人が作る以上の品質も実現されていくと考えています。それでも、事例のない実装パターンや独自のシステムの結合を行うなど、指示する人自身に未知の情報が多い状況では、AIが生成するコードに不整合やセキュリティ的な不備の落とし穴が潜むと思っています。設計上リスクが高い場所を事前に察知し、検証や原因調査にAIを助手として使いこなし、本質的な問題点を突き止める力は今後も求められます。不要な複雑性を生まず、本質的な検証にAIを使う姿勢が重要だと感じています。

鶴谷:進化の時代だからこそ基礎概念の理解と探求する姿勢が不可欠ですね。「データエンジニア」の本質も、探求心を持って取り組むソフトウェアエンジニアリングなのだと改めて実感できました。 今日はありがとうございました!

編集後記:ソフトウェアエンジニアの経験が活かせる環境としてのリクルート データ推進室

「データエンジニア」と聞くと、高度な統計学や機械学習アルゴリズム、あるいは巨大なDWHの構築経験が必須であるというイメージを持つソフトウェアエンジニアの方も少なくないかもしれません。しかし、今回池田さんが語ってくれたように、データ活用やAI・ML(機械学習)の最前線で今本当に求められているのは、「信頼性の高い基盤を設計し、開発者が安全かつ高速に試行錯誤できる環境を整えるソフトウェアエンジニアリング力」 です。

トラブル時に技術の深部まで原因を突き止める探求心、標準化やドキュメント化によって組織の生産性を高める視点、そしてWebやインフラで培った基礎体力など、これまで培ってきたソフトウェアエンジニアとしての強みは、大規模なデータやAIの基盤作りにおいても大いに活かされています。

変化の激しい時代においても、地道に培った基礎スキルがあれば、自らの可能性をどこまでも広げていける――本対談が、これまでの歩みを振り返り、新たなキャリアの選択肢に目を向ける一つのきっかけとなれば幸いです。

※組織名・肩書は記事公開日時点のものです

大磯 春佳

プロダクト企画統括室

大磯 春佳

データ推進室の技術広報や採用ブランディングを担当しています。